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「小さな旅」

by oyatsutakiko

先日のセミナーにて、ビジネスホテルに泊まらせていただいた。

久しぶりの都会、美味しい会食の後、

ほろ酔い加減で部屋に着き、明日のためにもとしっかり眠った。



早く目が覚めるだろうとたかをくくって目覚ましもかけずに寝たら、
気がついたらもう7時だった。

あらー、5時頃には起きて、散歩でもすっかなと思ってたのに、
朝食いただいて支度したらもう待ち合わせの時間だな、と、

さっそく朝食をいただき、
それでもちょびとだけ散歩して部屋に戻り、
何とは無しにテレビをつけた。

NHKの「小さな旅」が始まったようだ。
思わず消すかな、と思ったが、今日は消さないでテーマ曲を聞いてみた。



父を送ってからもう20年近く経つ。

素敵な曲だが、どうにも胸がしめつけられるようでなかなか聞けなかったのである。



父の病気は、私の結婚、そして市川から会津へ引っ越しの後にみつかった。


遠くへ嫁に行った娘に心配をかけまいと、父母も妹も最初は知らせなかったが、
手術当日に妹がこれはいかんと思ったのか、電話をくれた。
携帯電話も、メールももちろん普及していなかった。

とりあえず次の日急いで実家に戻り、

手術当日よりはずいぶん元気になった父に会い、
病気のことをいろいろ聞いて、会津へ戻った。


地域の習慣に慣れようとただ必死だった。

その間にも父の病状は静かに進行していったようだ。



最初の子は里帰り出産が当たり前なんだよ、と教えていただき、
勤め始めてもいたが、里帰り出産の予定を組めたことは、
ほんの少しだけ恩返しになっただろうか。

無事に元気な女の子が生まれ、
母にはだいぶ甘えさせてもらった。
父の世話と仕事、そして産後のあれこれ。
だいぶ負担をかけてしまったと今でも申し訳なく思う。

なんぼ里帰り出産が許されても、
いつまでもというわけにはいかなかった。

月に1回はなんとか実家に顔を出せるようにと、
職場にも相談して、土、日だけのパートにしてもらい、
初めての子の必死の子育ての日々を過ごした。


そんな秋のある日、父がこちらに遊びに来るという。

会津から、父の母方の故郷で、子供の頃の疎開先でもあった、
新潟県の柿崎にも回って家に戻る予定だそうだ。

お酒はもちろん、食事量もだいぶ少なくなり、疲れやすいのかすぐ寝てしまうのだが、
たくましく育っている孫の様子に顔をほころばせ、
お風呂が気持ちいいと喜んでつかり、
なかなかうまく操作できないテレビゲームのカーソルに大笑いしながら過ごした夜だった。

次の日。

娘と共に会津若松駅まで車で送った。

入場券を買ってホームへ入り、
抱っこ紐で娘を抱っこしながら父の乗る列車を待った。

程なくして電車は滑り込むようにしてホームに入り、
父を乗せた電車は、すっと発車した。

今までニコニコとしていた父は椅子から急に立ち上がり、
動き出した電車の進行方向の逆、こちらを向いて歩き出し、
何かを伝えたかったような真剣な顔をした。
父を乗せた電車はどんどん遠くなっていった。


その年も何回か、
年明けも少し帰ることができたが、
ほぼ入院状態の見舞いに往復の日々だった。
こんな直前までも、父のお迎えを信じない、信じたくない家族の思いだった。
春、桜の咲く頃、いってしまった。


きっと上から見てる、楽しいこと、嬉しいことがあると、

「よかったない(^^)」

って言ってくれてるよねって母と話す。


だけど、

こんな時はどうすればいいの?って時に、

的確な言葉で、時には意外な視点からの意見をぽろっと言ってくれる父には、

今少し元気でいてほしかった。

子供あしらいの上手な父に、子供たちと一緒に遊んで、
読み聞かせをしてほしかったなあと
ついつい思ってしまうのである。




oyatsutakiko
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