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深夜の忘れ物

by oyatsutakiko

その夜は雨が降っていた。

娘は勤めから帰ると、家族の予想通りウキウキそわそわと家の中を動き回り、マイペースでご飯を食べ、風呂に入り荷造り準備など始めた。

なぜウキウキしているのか、そう、夜行バスで上京し、大好きなバンドのライブに向けての準備なのである。

何分までこの準備をして化粧をして…もちろん、残った家族の都合はおかまいなく、ドドバタと支度に余念がない。
「ねえねえこのカラコン(パチパチッ♪)どう?」
などと家族を巻き込むのもいつものことで、すっかり慣れっこだ。かえって出かけた後はそこはかとない寂しさを感じるくらいである。

今回は駅近くの駐車場に車を止めて駅発の東京行きの高速バスに乗るそうで、ウキウキババン!と夜半前に出かけてしまった。

さて、台風が過ぎ去ったような部屋にしばしぼーっとなりながら、明日も早いし寝るか、寝る支度をしてふうっとひと息ついたその時、携帯が鳴った。娘からだった。

「どしたの?!」
「忘れ物しちゃった…」
「何?」
「カーディガン、グレーの…」
「どこらへんにある?」
「赤いテーブルの前あたり…」
「あった!バス何分発?」
「12時半…」
時計を見る。12時13分だ。
「おけ分かった!じゃね!」
「ずびばぜん…」


ピッと携帯を切るが早いか、ズボンだけ履きかえて速攻家を出た。

日中、普通に駅に向かう時はだいたい15〜20分、
深夜なのでもうちょい早く着くだろう、しかし気は抜けない時間だ。





娘の高校時代の送迎時に開拓した信号機のない裏道を抜けて表どおりから国道に出るルートにしよう。表通りのあの信号は今の時間は点滅になっている頃、国道にでる信号さえクリアできれば間に合う。加速が自慢のマイ愛車で、捕まらない程度の速度で走りながら頭でルートを描き、キパッ、キパッと運転する。国道の信号で若干足止めをくったが初動が良かったせいか間に合いそうだ。

よっしゃー駅ロータリー見えてきた!止まった信号で左折して出てきたのはなんと娘の乗る高速バスが営業所からまさに今駅に向かうところ。高速バスがぐるっとロータリーを回り停車場に向かう。その真後ろから駅前全体を見渡した。いた。少し猫背気味に私の車を見つけていた。このとき12時25分。

「ずびばぜん…」
「なーにで返してもらおっかなぁー<( ̄∇ ̄)> 」
「このお返しは何かで必ず…」

という訳でブログネタにさせてもらった次第である。


oyatsutakiko
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