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水槽事件

by oyatsutakiko

4、5才の頃の男の子は、起きてる間は止まっちゃいけませんスイッチがどこかにあるんじゃないかと子供の小さいころよく思った。水槽事件は、そんな息子の幼稚園年少の頃の出来事である。

冬の始まり頃、ちょうど今くらいの季節だったと思う。
幼稚園からの園バスが玄関前に着き、元気よく家に戻ってきた息子を迎え入れた。
ついあれもこれもと手を付けてしまった為に、園バスが着く前に是非とも終わらせたかった掃除機かけがまだ終わっていなかった。

家に入るが早いか、すぐさま掃除機のノズルを見つける。ノズルを着脱しながら掃除機をかけていたので、ノズル部分が部屋の片隅に転がっていたのだ。彼には剣にしか見えないであろうほどに、息子が振り回すのにジャストフィットの長さである。もちろん迷わずにつかむと、うぉりゃーっ、とか言いながら走ったり振り回したりし始める。やれやれ。若干短くてかけづらいけど、早いとこ終わらせてしまいたかったので中腰になりながら中断していた掃除機をかけ始めた。ま、いっか、何かになりきってる間にこちらの作業もはかどるというものである。

飛鳥のように飛び回り、彼は何かと戦っている。声の行先で気配を感じながらも、角の家具の隙間の掃除機かけに集中していたその時、

コチン、
トクトクトクトク…

ん?なんか水系の音が聞こえる?なんで居間から?

振り向いたその瞬間、

「でぇぇーーーーぃっ??!!!!」


息子が振り回していたノズルがローボードの上に置いてあった四角い水槽の右下部分に当たり、ガラスが割れ、そこから滝のように滔々と水が流れ落ちているのである。ホワッツハプン?ココハ水ガ流レテテハイケナイ場所デスヨネ、ソウデスヨネ?とハニワになった。

そうこうしてるうちにみるみる水位は下がり、金魚ちゃんたちが下に集まってきた。これは金魚ちゃんたちのピーンチ!ハニワになってる場合ではない。即座にサイボーグ009が奥歯を噛み締めた時と同じくらいの速さで風呂場の洗面器を取りに行き、間一髪で金魚ちゃんたちを救い出した。

金魚ちゃんたちを洗面所に避難させてから改めて現場を見ると、なかなかに被害甚大である。そりゃそうだ、水槽の水の4/5は床に流れ出し、ホットカーペットとその上のラグマットとローボードと床の狭い隙間部分をビサビサにしている。ガラスの破片こそそんなに飛び散らなかったものの、まずはこの水槽をどうにかしてからじゃないとビサビサ部分も拭けないのである。

重い水槽とガラスの破片をどかし、ラグマットをコインランドリーに持っていけるくらいに処理してまとめ、ほのかに魚のにおいの残るホットカーペットの水分を取り、濡れ雑巾でたたき、もう日の陰ってきたベランダに干した。小学校から帰って来た娘が「どうしたのーっ?!」と叫んだ。

被害はこれで終わらなかった。

ローボードの裏にテレビのアンテナ線があり、そこをやられちゃったらしく、徐々にに1チャンネルずつ映らなくなっていった。とうとうフジテレビしか映らなくなったその後、まあまあお世話になったそのテレビは静かに生涯を終えることになった。

園バスが来る前にやっていた家事の何倍もの仕事量になってしまった。主婦業は過酷である。
ま、今となっては伝説の笑い話である。


oyatsutakiko
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