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女優演技

by oyatsutakiko

注)写真は本文と全然関係ありませんが、本人でございます。


前項で、密かな演技願望を告白したのだが、そういえば1回だけ、渾身の演技が通じた場面があった。

娘が小学校3.4年、息子が幼稚園生だった頃の、ある夕方の出来事である。

娘も息子も近所の広場でしっかりと遊び、なかなか帰りたがらない小さい方をなんとかなだめてすかしてようやく家に入れ、さて母親は晩ご飯の支度である。となりのテレビの部屋で子供番組など見たり、好き勝手にウロウロしてる様子をなんとなく察知しながら作り始める。

と、となりの部屋で姉弟げんかをし始めたげな声が聞こえ始めた。5歳はなれててもけんかはする。ましてや自分たちでは疲れたと自覚していない体と、お腹が空いている状態だ。そして、口の立つお姉ちゃんに対抗できる弟の手段は叫んで手を出すことくらいしかない。

勢いでだだーっと怒ってしまっても、その後のご飯やらお風呂やら宿題やらの時間に、修復しつつこなしていくのはたいへんな労力だ。遊びの付き添いでずっと表にいたのでこちらも疲れている。けんか勃発のたびに、なんか良い方法はないかなぁとやれやれと思っていたのである。

と、その日はきっと女優の神様が舞い降りてきていた。けんかの間に入り、訳を聞き、そして崩れるように座り込んだ。これには怒りに任せて口撃が止まらなかった娘より、息子の方が早く反応した。
「?」

「ママどうしたの?」

数秒置き、

「なんでこうなっちゃうのか…  ママは悲しい…。。。」

息子の激しい動揺が手に取るように分かった。姉の娘も口撃をやめ、様子を伺う。

(まだまだこらえて。女優の神様は多分そう仰った)

心配してオロオロする子供たち。この子たちが寝るまで、演技の手を緩める訳にはいかない。




シオシオになってしまった子供たちはその晩、たいへん素直にお風呂に入り、ご飯を食べ、おとなしく就寝した。


長嶋茂雄もかくやという程のガッツポーズを、子供たちに見られない様にしたことは、今でもよく覚えている。がしかし、あれ以来女優の神様がご降臨なさったことは、おそらくないだろう。



oyatsutakiko
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