LOG IN

父との思い出(竹馬編)

by oyatsutakiko

家で仕事をしていたからということを差し引いても、父は良く子供のめんどうをみてくれてたと思う。

背広職人で、部屋の一角に仕事場があり、そう忙しくない時は仕事場で話し相手にもなってくれたし、家でやる折り紙やトランプ、回り将棋、そして表でやる遊びもよく付き合ってくれた。

大人になってから母から聞いたのだが、父は、うちはお金をあまりかけてあげられないから手間をかけるんだ、という気持ちで子供に接していたらしい。子供を持った後に、あらためてそれってすごいことなんだと折々に感じる。もちろん勇み足なんじゃなかったかなぁと感じる出来事もあったが、全般的に、一緒に楽しむスタンスで付き合ってくれたことを本当にありがたく思っている。



幼稚園、おそらく年長の頃のこと。

幼稚園で、希望者への竹馬の販売があり、近所で一緒の幼稚園に通っていた幼なじみたちは、喜んでみな購入した。竹馬セットが届くと同時に、近所では軽く竹馬ブームとなった。

木でできた棒に、同じく木でできた赤い板で足を乗せるところが作られている。父に組み立ててもらい、一番低いところから、棒に体重を乗せるバランス感覚を覚え、出来るようになった子から徐々に上に上げてもらって、みんなでムキになって練習した。


その頃は近所にもたくさん子供がいて、幼稚園、小学校に上がっても帰ってきてからの遊びにはまったく不自由しなかった。ランドセルを置いて表に出れば誰かしらは居たし、何人か集まると近所の家に、

「◯◯ちゃん!あそびましょ!」

と声をかけるのが通例だったのである。

ごっごあそびもなわとびも、バトミントンも。

ボールひとつでいろいろと遊べたし、三輪車から自転車も、
ホッピングやゲイラカイトなど、面白そうな遊び道具を誰かが買ったとなると、それはそれは大騒ぎで遊んだ。

流行りものの遊び道具に飽きても、またすぐスタンダードな遊びに戻り、父の言うとおり「子供は遊ぶのが仕事だ」状態で、膝こぞうの擦り傷が必ずどちらかにはあるような小学校低学年時代だった。


そんな中でその頃には、竹馬はどちらかといえばもうスタンダードな遊びの部類に入っていた。

だいぶ歩くのには慣れてきているので、何か新しいことがしてみたくなる。
広場をひとしきり歩き回り、ちょっとした段差の上り下りもチャレンジし、そんなときにちょうど父が家から出てきた。

「おー竹馬か(^^)ちょっとお父さんにも貸してみろ」

「いいよ!」

ウキウキと乗り始める。
子供にとって親がウキウキと何かをしてるのを見るのは単純に嬉しく、自分もウキウキしてくる。

「うーん、慣れてくるとなんだか味気ないなあ。どうだ少し高くしてみるか。」

「うん!!やってやって!」

アタックNo.1のこずえにも負けないくらいのキラキラ目になっていたに違いない。


程なくして父がテキパキと高さを変えて持ってきた。
おおおぉ〜✨
棒の長さの2/5くらいまで上げてきた。
塀によっかかって乗り、歩き始める。
おぉぉ〜♪視界がさっきと違うぅ〜〜♪♪

楽しそうに乗る姿に満足そうな笑みを浮かべ、

「どうだ?もうちょっと上げてみるか?」

と父は言う。

「上げて上げて!!!」

親子揃って調子に乗りやすいのである。

とうとう棒の半分近くまで上げてきた。んもう目の中は✨✨✨である。
よっしゃー!チャレーンジ❤️

おおー!サワサワするように高い。そして棒を持つ手の位置が今までより低くなる。棒のてっぺんをステッキを持つ様に持ったり、やっぱこれじゃバランス取りにくいななんて、持ち手をうまくあんばいしながら歩く。

「お父さん高いよ!」

めちゃめちゃフゥ〜〜〜✨状態である。



「どれお父さんにも貸してみろ」

「いいよ!」

父もウキウキと、塀にも寄りかからずによいっと乗り始めた。

「おおぉこれはこれは…」

と、乗って2、3歩歩き始めたとたんに

メリメリメリッ!!!


棒の片方が乗せている足の下から折れてしまったのである。

一瞬のハニワ顔ののち、

「うわわああああああーーーーーん!!!
びええええええーーーーん!!!!」

隣三軒まで響き渡るような声で大泣きした。

だってだって!幼稚園のときからのお気に入りの竹馬だったんだ!
こわれちゃってめちゃくちゃ悲しかったんだ!


今から思えば、たいへん申し訳ないことをしたと思う。
そのときはいたたまれなくなって、ぴしゃっと玄関を閉めて家に入っていってしまった父は、
卒園した幼稚園に竹馬の販売先を尋ねてみたり、購入できないと分かると、物干し竿と板切れと金具を仕入れてきて、手作りで今までの1.5倍は大きい竹馬を作ってくれた。

うすい緑色でコーティングしてある物干し竿で作ってくれた竹馬。かなり頑丈で、その後もたびたび遊びの中に登場したと思う。玄関の一角の子供用自転車のとなりが竹馬収納スペースになった。


実家の竹馬はもうないと思うが、思い出しながら書いていてとても竹馬に乗りたくなった。
まだちゃんとバランスをとって乗ることができるだろうか。



oyatsutakiko
OTHER SNAPS