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小さな瞳とアップルパイ

by oyatsutakiko

それは吹雪の開店日だった。

すばらしい降りっぷりを窓から眺めながら、こりゃぁ表に出るのやんだくなるよなぁと思いながら店番をしていた。とその時、常連のお客さまがいらっしゃった。

雪の中わざわざ…ありがたやありがたやと思いながらご注文を伺い準備をする。軽く世間話などした後、帰りぎわに、

「あの…はずかしいので帰ってから読んでくださいね」
と仰って、コピーを丁寧にとじたものをいただいた。

小学生の娘さんの毎週末の宿題に、その週の出来事を自由に綴って先生伝える、というのがあるそうで、過日店に訪れた時に見たことを書いてくれた作文だった。



先生あのね、木よう日にタキコさんのケーキやさんに行きました。
 ふつうのケーキやさんは、ショーケースにたくさんのケーキがならんでいるけれど、タキコさんのお店は、ふつうの家みたいでちょっとふしぎです。いつも、タキコさんが一人でケーキやおか子を作って、お店番も一人でがんばっています。
 おとといは、「雪で、むす子のむかえによばれちゃってー。」
と言って、アップルパイしかやけていませんでした。
それが、さめたところで、まだカットされていなかったので、キッチンの中に入らせてくれて、仕上げるところを見せてもらいました。

 タキコさんは、切る時にほう丁を二本使っていました。まず、はが小さ目な方で切るところのしるしをつけていました。それから、はが太くて長いほう丁で、ザクッと一気に切っていました。ほう丁は、おゆであたためて、一回一回布巾できれいにふきながら使っていました。そして切ったパイをかわいい赤い紙にのせてかんせいしました。
 お会計の前に、アップルパイにする前のあまくにたりんごを一かけら食べさせてくれました。そのままのりんごは、はじめてでとてもおいしかったです。かってかえったパイもやっぱりおいしかったです。


思わず泣いた。

子供のまっすぐな瞳と素直な文章に心臓のあたりがぎゅうっとなる。
「先生あのね」から始まる可愛い文章、その後は、大人もかなわないほどのしっかりした観察と、きちんと順序立てて進む文。良く見てるなぁ!ほんと感心しました。

この文章の時は、お母さまと世間話をしながらカットしていて、そのまっすぐな瞳にまったく気付かずにいた。素直な、正直な瞳。

後日、お母さまに聞いたところ、この娘さんはまだ一年生なのだそうだ。


「女の子って可愛いな」の項でも思ったことだが、小さな子の素直な言動は本当にすごいパワーだ。

子供って、ほんとうにすごいと思う。


oyatsutakiko
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